人の身体に触れることを生業にする人へ。
この記事では、ぼくが実際にしてきた「触れる感覚」の練習法を3つ、そして施術の前に大切にしている向き合い方をまとめました。
シヴァゴがインドのカーストに逆らってまで行った医道。そのご縁で、ぼくらは出逢えました。
ありがたいことに「あなたのようになりたい」と言ってもらうこともあります。でも、ぼくが歩んだ道しか、皆さんに伝えることはできません。
2020年4月に連載した「未来のゴッドハンド達へ」5本を、1本にまとめ直したものです。
上達には段階がある
はじめてするゲームでは、画面を見ずに手元を見て「このボタンとこのボタンを同時に押して、こうっ!」とやりますよね。
慣れてくると、画面だけを見ながら「こんのやろー!」と独り言を言いながらできるようになります。
- はじめの段階:テクニックを覚えている段階。左脳でやるので、タイミングもずれてストレスばかり。
- 次の段階:お店で言うと中堅。ルーチンワークになってモチベーションも下がりがち。それで良いのです。
- その先:お店でトップになり、お客様からもスタッフからも信頼されて、自信に満ちる段階。
そこまで行く方法を伝えます。それはぼくがしてきたことで、これ以外は知りません。
ゲームを楽しむためには、まずコントローラーを自由に扱えないとね。
練習の土台:教科書のステップを一つずつ
- 教科書を見直してください。
- 各ステップを「人生でこんなに集中したことはない!」と世界中に大声で言えるくらい、やってください。
- 1日1ステップでいい。競争でも勝ち負けでもなく、自分のできるペースで。
- 自分の呼吸は? 姿勢は? 鏡があればとても簡単です。
ぼくは駆け出しの頃、借金を抱えてワークショップに出ていました。鏡を買うこともできませんでした。夜中に部屋の電気をつけて窓を開けると、鏡みたいに自分が映る。そうやって練習していました。
必要なのはお金じゃなくて、覚悟です。
ステップ①〜⑤ができたら、次はフロー(流れ)を創る練習。①〜⑤を通して同じことをする。それができたら①〜⑩。エンドレスです(笑)
これを投げ出さずに、もちろん休憩もしながら続けていくと、技は必要なくなります。
技にこだわるから、うまくいかないことに氣付く。そのとき「なもたさー、ぱかわとー」の真意に氣付きます。
「二人ヨガ」「二人瞑想」。これが表現できるとき、技は要らなくなるのです。
練習法1 指先感覚
指先感覚は、人の身体に触れさせていただくうえで、もっとも重要なものです。
- 辞書や新聞紙、週刊誌などの上にシャープペンの芯を置く。
- その上に1枚ずつページを重ね、ページの上から芯を探す。長さは? 太さは?
- 慣れてきたら「髪の毛」でやりましょう。プロなら髪の毛を目標に。
ポイント
・力を入れると分かりにくくなります。極限まで力を抜くと分かりやすい。
・目を閉じて、視覚を消しましょう。
・自分の姿勢と呼吸にストレスがあると、感度は鈍ります。
指先感覚を磨く練習を続けていたら、3〜4枚くらいまで分かるようになったのに、忙しさにかまけてやらなくなったら、見事に分からなくなったんです。やらないと感覚は鈍るものなんですね。
講座の参加者さんの声
言葉にすると「?」となりますが、100回やれば誰でもできます。できなければ一緒にやりましょう。やり方がずれているだけなので、修正すればいいのです。
練習法2 掌感覚
人の身体を、どこからどこまでと考えるか。
有機体として見るなら肌まで。熱エネルギーとして見るなら、熱は肌を越えて数cm先まで広がります。
自分の掌を有機体と見るか、熱エネルギー体と見るか。それだけで、タッチの質は変わります。
- 掌を思いきり開く。こんなに開いたことはないというくらい開いたら、一気に力を抜く。
- 太ももの内側など皮膚の薄いところにかざして、温度を感じる。何cm離れても温度を感じるか?
- それを自分の全身にかざして、どこがどんな感じかを「受け取る」。お客様の身体の状態を受け取ることにつながります。
ポイント
・掌の力を極限まで抜く。指先も含めて力が抜けると、包むような形になります。
・現場では、圧は腕ではなく身体から生み出します。
・掌の下で、氣・血・水と温度の変化、違いを感じ取ります。エゴの施術では感じ取るのは難しいと思います。
※ぼくはこのタッチを触診や自律神経アプローチ、ウォームアップ、クールダウンで使っています。流派ごとに考えは違うので、習った先生にも確認してください。
練習法3 重力(地球)と遊ぶ

筋力には限界があります。階段を降りるとき、体重の6〜7倍の負荷がかかると言われています。体重50kgなら300kg。筋力で受け止めるのは不可能で、骨、拮抗筋とのバランス、筋(膜)の連結、腔といった「構造体」で受け止めているのです。
歩くとき、踵が地面に触れた瞬間に伝わってくる重力(地球)の反作用を、次の一歩にロスなく伝えるには?
そして、そのエネルギーが自分の経絡のどこを通ると氣持ちが良いのか?
ひたすら感じてみてください。
- 呼吸は?
- エネルギーはどの経絡を走り、どこから次の動きが始まる?
- 首は落ちていないか? 腔を保てているか?
「これ違うな」は、丁寧に歩けばわかります。
「これ近いかも」は、しばらく歩くとわかります。
「あ、これ!」は、もうしばらく歩くとわかります。
そのうち、地球と友達になっていることに氣付きます。
このエネルギーの走るラインを、経絡と呼び、筋連結と呼び、筋筋膜経線(アナトミートレイン)と呼びます。この感覚を、次はお客様の身体の中で感じ取る。そこにずれがあるから、痛みや凝りが出てくるのです。
どこを見て施術するのか
主訴だけに向き合うなら三流です。対処療法を繰り返して「通ってもらう」サロンになってしまいます。
根本原因と向き合うには、お客様がどんな環境で育ち、どんな環境で生き、どんなモチベーションで向き合っているのかを理解する必要があると思います。
そのためにぼくがしていることは、タイマッサージのマントラの一文を胸に、お客様と真摯に向き合い続けることだけです。
今、目の前に在る身体から全ての痛みと苦しみが取り去られますように。そして、幸せが訪れますように。
「こうすれば痛みは消える」と教科書どおりに当てはめるだけでは、受け手と向き合わない、ただの作業になります。
(診断は医療行為であり、国家資格を持つ人だけが行えます。)
西洋医学の見解でも、「作業としての治療」と「人の尊厳を理解して向き合った治療」では、出てくる結果が大きく違うことが示唆されています。量子力学では、今やこの辺りは常識であり、基本通念となっています。
どのような療術であれ、ライン作業ではない、向き合うアプローチを心がけてください。
ぼくが歩んだ道
ぼくは学校でも最低点でした。先生がぼくを合格にしたとき、周りの生徒は大ブーイング。悔しくて、悲しくて、先生に申し訳なくて。
パンチドランカーで記憶ができないから、教わったことが何もできなかった。日本に来ても練習相手はいなかった。借金をしてワークショップに行きました。
それでも、この道しかないと思った。「できることを全てやろう」。
当時は「この世界で今日1日、おれよりも練習して、人の身体に向き合ったやつはいない!」と思えるくらいやったこともあります。勘違いだけど。
皆にやれと言っているわけではありません。それぞれのペースで良いのです。
最後に
自分の愛する人が辛いとき、どんな人に触ってもらいたいですか?
それがはじまりで、そこを忘れたら、この仕事は接客業としてセクハラも全て受け入れた方が良いかもしれません。
わからなかったら、わかるまで付き合います。
練習は楽しい。自由に近づいていくから。方法は一つではなく、正解もありません。
さぁ、未熟さを楽しもう。
