人の身体に触れることを生業にする人へ。
この記事では、2020年に書いた「未来のゴッドハンド達へ」から、プロとしての仕事観について書いた4本をまとめ直しました。
努力のこと、指名のこと、プロ同士で施術するときのこと、そしてお客様に伝えたいセルフケアのことです。
商売をなめんじゃねぇ

お客様とのセッションを終えて、駅に向かう途中のスペイン料理店。カウンターでグラスを傾けていると、オーナーシェフがこう話してくれました。
飲食は自分の味に、それこそ世界一という自負があっても半年で潰れるお店がほとんどです。お客様はシビアです。努力を続けても潰れるのが当たり前なんです😆
オーナーシェフの言葉
客商売という点では、ぼくも同じです。プロであれば当たり前のことです。
お金をいただけない高校球児ですら、朝5時に起きて100本くらいの素振りはする。ならば、お金をいただいているプロはどこまでするのでしょう? 当たり前のことを、当たり前にする。
努力を苦痛と思うのか。歯磨きと同じレベルで行うのか。そもそも努力が楽しくて、ずっとやっていたいのか。どれを選んでもいいのです。
「対価」という言葉があります。その事象に「対」して、いくばくの「価」値があるのか。
自信がないなら、練習をすれば良い。それ以外に、どうやって自信を付ける方法があるでしょう。
自信とは、実践した数です。言い換えれば、修羅場の数です。
柔道の木村政彦という偉人がいます。グレイシー柔術に土をつけた二人目の日本人で、敬意を込めて「キムラロック」という技の名前まであるほどです。
「木村の前に木村なし、木村の後に木村なし」。そう言われたのは、木村氏が「三倍努力」を実践したからです。
私は躰格に恵まれず、ならば人の倍努力しなければ対等になれない。人を越そうと思えば三倍努力するだけで良い。
木村政彦
打ち込みの相手が深夜まで続く稽古でいなくなり、仕方なく立派な樹に打ち込んだところ、あまりの激しさに樹はすぐに枯れてしまったそうです。
この仕事は、努力であれセミナーであれ、すぐに評価が変わっていきます。お客様の笑顔は、すぐに変わる。それは楽しいものです。
最初は自転車だって乗れません。誰もが転ぶし、泣きべそをかく。それでも氣付けば自由自在に漕げるようになる。
成長を実感できるなんて、なんて楽しいんだろう。そしてまだまだ伸びしろしかない。楽しもう🎵
指名率へのこだわり
ある先生に「指名率を引き合いに出すのはよくないかも」とアドバイスされたことがあります。それでも、やはりこだわりたい。
修行時代にお世話になった先輩は、出勤するとほぼ指名予約で埋まっていました。予約と予約の間の空き時間(アイドリングタイム)はゼロ。稼働率は50%を越えたら繁盛セラピストと言われる中で、その先輩は90%を越えていたと思います。
人当たりも良かったけれど、揉みほぐしで揉み返しが来なかったのはその人だけ。タイも足もオイルもできる。つまり、技術指名です。
不況が来たとき、その先輩のすごさを痛感しました。その先輩だけ指名率100で、他のセラピストは「タコ」で帰る。この業界でタコとは、1日の収入が0円ということです。
生徒には、こう伝えています。
「独立するなら、男女比5対5の指名率を目指しなさい。男女比が偏るなら、それは技術指名ではない」
困ったときに支えてくれるのは、指名客なのです。
中途半端な指名率でモヤモヤする時期は誰にでもあります。空き時間がもどかしい。それを乗り越えると「予約がとれないセラピスト」になれます。
そのモヤモヤを、向上心の燃料にして進むのがこの仕事です。苦しいかもしれないけれど、それが今の実力。受け入れて、さらに進もう。
プロからの即予約と、可能性

一般のお客様から即予約・即指名をもらえることは、この仕事の職人としての醍醐味です。そして、同業者、それもトッププロからの即予約は、また違う満たされ方をします。
同業者はボディワークを受け慣れているので「受け上手」です。受け上手の人の身体を通すと、施術を導いてもらえる。
俯瞰している自分と、自分のコアにぐんぐん潜り込む自分がいて、受け手のファシア(筋膜)と自分のファシアが共鳴する。タイマッサージのマントラにある「今シヴァゴの御霊をここに降臨し」の境地であり、二人ヨガの体現の先です。
そのとき相手の求めることに細胞レベルで応えていて、受け手の喜びを共感できるので幸せでもあります。ここで共感を勘違いすると別物になるので、あくまでもメッタ(慈愛)です。
世に言う「ゴッドハンド」も、ジャンルを越えて最後は同じことを言います。
「腰痛に対して、まず筋肉、ダメなら骨、それでもならファシア、それでダメなら頭蓋、髄液……多くの療術家はそうしようとする。こんなことをしていたら本質には辿り着けない」。そんなところは、ゴッドハンドと言われる人は見ていないのです。
14歳でブルーハーツを聴きながら立禅を行い、それから20年、人を上手に壊すことと、上手に元に戻すことに夢中になりました。立禅、歩き瞑想、八極、陳式、八卦、古流に原理原則を見つけ、フルコン空手で実践と理想の大きなずれを体感し、修正の仕方に氣付けた。
実践の極み、基礎の反復。そこにゾーンと言われる境地があり、そこには技など要らない。それはすでに不純物です。
李書文に二度打ち要らず、一つ打てば事足りる
ボディワークの可能性を、タイマッサージの可能性を、そして自身の可能性を低く見積もる必要はありません。
可能性を信じよう。
お客様へ「セルフでやってますか?」
実は、風邪ですら治す薬はなく、そのメカニズムも完全には解明されていません。それでも治るのは、自然治癒力と言われる免疫が働くからです。
ぼく自身、現代西洋医学にも東洋医学にも全てにおいて納得しているわけではないので、とにかく学び、実践し、自身の身体でも試し尽くしています。それでも、科学的(医学的)根拠のないものを人に伝えることには少し抵抗があるので、根拠を求めて探求に時間を費やします。
足三里のツボへのお灸で、結核の治療がアフリカで行われています。
このアプローチには誤差のレベルではない効果があるという論文もあり、その際に数値で「免疫が上がった(適正化)」と出ています。お灸は、自分で行う場合は免許は要りません。
人間は、細菌学が出てくるまで、こういった形で何万年も苦難を乗り越えてきました。
- 手洗い、うがい、歯磨き、マスクで体内に入れない
- 季節のものを丁寧に食べて、お腹を温める
- 深い呼吸、適度な運動、お風呂と睡眠
- ストレスを減らして、よく笑う😆
ほとんどの手技療法は、工夫すればセルフでできると思います。
自身の症状を自身で消せれば、他者にもできるのが当たり前ではないか。ここをしっかりしている術者は、やはり違います。そしてそれは、とても楽しくもあるのです。
